コルセット





別に覗こうとか、そういう下心があったわけじゃない。
第一、彼女の部屋でそんなことが行われているなんて、しるよしもなかったのだから。
確か翌日の予定を聞くために部屋に行ったのだったと思うが、よく覚えていない。

ノックをしたが返事がない。
「オスカル、入るぞ」
鍵が開いていたので、いつものように居間に入って彼女の姿を探した。
寝室から声がするのに気づく。
オスカルとおばあちゃんのようだ。

「お嬢様、お待ち下さい!!」
「うるさいっ!私はこんなもの毎日つけるつもりはないからな!」
喚きながら、寝室のドアを開けて居間に飛び出して来た瞬間、俺と彼女の目が合った。

一瞬、ぶん殴られるかと思った。
キュロットをはいていたが、上半身は下着―コルセットを身につけただけの姿だったから。

予想外に、彼女は顔を真っ赤にするとバタンと大きな音を立てて、叩きつけるようにドアを閉め、そのまま寝室に引っ込んでしまった(後でおばあちゃんに、十二分に痛い目を見せられたのだけど)。

これまでも「男のようだ」と思ったことはあっても「男だ」と感じたことはなかった。
でも改めて彼女が女であることを付きつけられた気がした。

華奢な肩も、細い首筋から伸びる鎖骨も、優美にまろやかなカーブを描く体のラインも。
何よりも、真っ赤に頬を染めた表情がかわいくて。

愛しいと思った。