Castor and Pollux

...... afterword .....
本編を読まれてからの方がほとんどだと思いますが、ネタばれありですので、ご注意!

まずは、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
今回は、30万ヒット記念のキリリクとして、しののめ様からいただいたお題を元に制作したお話。
しののめ様からのリクエストは、「アンドレとジョゼフの絡み」でした。
このSSの冒頭部分で、それは果たせていたのかもしれないですが、この際、あたためていたお話を併せて形にしてしまいたいと思い、全12話、連載期間4ヶ月という長めの作品となりました。

実は、すでにジョゼフくんを「宣戦布告」で登場させた後、もし彼を今後も登場させるとしたら、家族のことも書かなければならないと思っていました。
でも、18世紀の人間関係のままでは完全には幸せにはなれないですよね。そこで、あれこれ考えた結果が、マリー・アントワネットを二人の人間に分けるというものでした。
フェルゼンに胸を震わせた彼女の気持ちも本物だし、MC9巻で、国王の処刑前夜、「はげしい恋愛感情ではなかったにせよ わたしはあの人を愛していたのだと」と独白している言葉にも嘘はなかったと思うのです。
また、彼女は享楽的で遊び好きな反面、母親としての愛情は実に細やかだったようで、その二面性もこのアイデアを思いついた理由のひとつです。

”マリー”のキャラクターについては、お子様が生まれる前の”マリー・アントワネット”をベースとしています。
”マリー”が会社を立ち上げるというエピソードについては、展覧会や写真集などで、彼女の愛用品やプチ・トリアノンの室内を見るにつけ、センスのよさや表現力の豊かさを感じ、もし現代に生きていたら、自分のブランドのひとつも立ち上げて、案外大成功するのではないかと、そんな想像が元になっております。プチ・トリアノンなんて、まさにディズニー・ランドではないでしょうか。
ただ、コストがかかりすぎて、採算が取れないかもしれないという恐れがありますが、このSSの中では、しっかり者のローズ・ベルタン嬢が相棒になっておりますので、そこそこ経営もうまくやっていけるのではないかと思います。
”アントワネット”の方は、母となられてから、特に革命が勃発した後の”マリー・アントワネット”の姿が核になっております。

ジョゼフ君は7才まで一人っ子という設定で、長女のマリー=テレーズとは出生順序が入れ違っております。
「宣戦布告」を書いた後、「ジョゼフは革命が起こる前に亡くなって、ある意味幸せだったかもしれない」というコメントをいただいたことがありますが、私もそれには思わず肯いてしまいます。
マリー=テレーズとルイ=シャルルについては、両親と引き離された後、かなり辛い目にあっているようで、マリー=テレーズは両親や叔母の処刑後、弟とは別の場所に幽閉され、釈放後も決して幸せとはいいがたい生涯を送りました。
ルイ=シャルルについては、姉と別れた後、一般市民の家庭に預けられて数ヶ月間生活しますが、そこでは虐待を受けていたのではないかという話です。その後、タンプルの塔内に幽閉され、ここでの扱いもひどかったようです。そのため、わずか10歳で死亡しました。
このような二人の「ベルばら」その後を知るにつけ、「もし転生する可能性があっても、生まれて来たいと思えるだろうか」という思いがあり、今回、このようにジョゼフくんが励ます形で生まれて来るという展開にいたしました。
また、ご存知の方も多いと思いますが、ソフィー=ベアトリスは、史実では1786年に出生して翌年に死亡している第二王女です。この子も現代ではすくすくと大きくなって幸せになってほしいです。
なお、”アントワネット”のセリフの中に「実家の母は17人も子供を産みましたのよ」とありますが”マリー・アントワネット”を二人に分けた都合上、”17人”としております。史実のマリア・テレジアは16人の子供を出産しています。

連載途中で、「このお話のサブタイトルは、”アンドレの受難”かも」なんて言っておりましたが、実は、”国王ご一家幸福化計画”だったかもしれません(笑)


リク主様からは、「最初はアランとアンドレの友情物が見たいと思っていた」とも伺っており、どうせならばと、そのエピソードも取り込みました。こちらも以前から、いつかアンドレとも会わせたいと思っていたので、リクエストにかこつけて、実現させることができたのでした。
国王一家のエピソードも、アランとアンドレの友情も、ОAの周縁の物語なので、設定としては頭の中にあったものの、なかなか形にするには至りませんでした。
きっかけを与えてくださったこと、リク主のしののめ様には感謝申し上げます。私のやりたかったことをあれこれ加えてしまったことも、楽しんでいただけたそうで、度量の広さに重ねて感謝申し上げたいと思います。

最後になりましたが、マリー・アントワネットの人物像については、『マリー・アントワネットとマリア・テレジア 秘密の往復書簡』(パウル・クリストフ編 藤川芳朗訳 岩波書店)が大変に参考になりました。『秘密の…』を紹介してくださったL様、ありがとうございました。
また、励まして下さった方、読んでくださった皆様にも、心より御礼申し上げます。



2010.12.07.  つぼつぼ 拝







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